令和4年度「沖縄イノベーション・エコシステム共同研究推進事業(感染症分野)」に採択されました。

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2022.8.30

 本事業は、沖縄県企画部科学技術振興課の委託事業で、令和4年度から最長3年間の事業です(※毎年度末に研究成果にかかわる評価を受け、次年度継続の可否が判断されます。)。本事業では特に畜産用ワクチンと水産用ワクチンの開発に力を入れており、大腸菌発現系に特化して、(1)「ウイルス様粒子(VLP: Virus-like particles)」、および、(2)「疑似ウイルス粒子(PVP: Pseudovirus particle)」形成技術にさらに磨きをかけることを目指しています。

 組換えタンパク質性のワクチンは、一般的に安全性が高いといわれていますが、その反面、免疫原性が低くなる傾向があります(※免疫原性:抗原の免疫を誘導する機能のことで、例えば、抗体を作り出すために必要な抗原の特性などが含まれます。)。この免疫原性の低さを補うため、アジュバント(免疫活性化物質)とワクチン抗原とを混合して接種するわけですが、アジュバントは副反応を強めることがあるため、その使用が制限されたり、使用できるアジュバントの種類が限定される場合があります。そこで弊社では、タンパク質抗原の設計方法を工夫することで、その免疫原性を最大限高めることを目指しています。例えば、前出の(1)VLPですが、これは“ウイルスの殻”を構成するタンパク質成分だけを発現させ、形態的に本物のウイルスに酷似させたもので、免疫原性が非常に高いことが特徴です。したがって、弱いアジュバントでも高いワクチン効果が期待できます。また、VLPは感染性のあるウイルス粒子とは異なり、ウイルスの遺伝情報(RNAゲノムなど)を一切含まないため、安全性の高さもその特徴です。

 次に(2)PVPですが、これは本来粒子形成しない多くのタンパク質抗原に対し応用できる弊社独自の技術で、ウイルス感染症に限定されるものではなく、幅広い病原体由来のタンパク質抗原への応用を目指しています。すなわち、我々ヒトを含む脊椎動物の免疫系は、高次の構造を取った物質に対し比較的強く反応する性質をもつため(すなわち、免疫原性が向上するため)、組換えタンパク質抗原を粒子状に組み上げることによって、高い免疫原性を獲得できるよう工夫したものです。この技術によって組換えタンパク質抗原をバラバラのまま接種するより各段高いワクチン効果が期待できるようになります。ただし、PVPはVLPと異なり、病原体本来の構造そのものとは大きく異なるため、PVP形成技術は、ウイルス以外の抗原で本来VLP形成しない抗原やウイルスの抗原でもVLP形成が困難な抗原を標的としてワクチン開発を進めなければならない場合に特に威力を発揮します。